日蓮宗新聞

2004年12月10日号

法華信仰の至宝「曼荼羅本尊」

神奈川県鎌倉市の霊蹟本山妙本寺(加藤日暉貫首)で格護されてきた弘安2年(1279)の曼荼羅本尊が、日蓮聖人のご真蹟であることが中尾堯立正大学名誉教授・寺尾英智身延山大学教授らによって確認された。本年五月の本成寺(新潟県三条市・法華宗陣門流総本山)での発見に続き、これにより現在129幅目のご真蹟本尊が確認され、新たに法華経信仰の至宝が加わることとなる。

今回確認された曼荼羅本尊は、弘安2年、日蓮聖人御年59歳の時に身延山で揮毫され、弟子の日行という人物に授与されたもので、丈49cm×幅31cmの一紙に顕されている。日蓮聖人の曼荼羅本尊の中では小型の部類に属し、本紙は厚手の楮紙が用いられ、防虫や表面保護のための染色と打紙加工が施されている。
妙本寺には、現在、六幅の日蓮聖人ご真蹟曼荼羅本尊が格護されているが、今回確認された一幅はご真蹟としての確証が得られないまま宝蔵に修められていた。しかし綿密な調査を進めるうちにその形状や伝来がはっきりし、ご真蹟と判断するに十分な条件を満たしていることがわかったという。
中尾教授によると、日蓮聖人は身延山で大小さまざまな曼荼羅本尊を揮毫され、今回のような一紙ほどの小型のものも多くの信者に与えられているが、そこには文永11年(1274)10月の蒙古襲来(文永の役)が関係しているという。
未曾有の国難を経験した当時の日本では、迫り来る再度の襲来に備え、防衛のために多くの武士たちが九州に赴いた。その際、「お守り」として身につける曼荼羅本尊の揮毫を日蓮聖人に願った武士層の信者たちの姿が想像される。
事実、弘安4年(1281)には再び蒙古の大軍が九州博多に襲来するが(弘安の役)、それだけに当時の社会不安は大きく、留守を守る妻子も大きな悩みと不安をかかえ、「僧侶も信者も共に危機感を持っていた時代」と中尾教授は語る。
今回確認された弘安2年の曼荼羅本尊は「お守り」として携帯された可能性が強く、ご真蹟であるという判断には、正確を期すため、長期間にわたって調査を行ってきたという。
 現在日蓮宗では中尾教授を中心とするメンバーにより、宗門寺院で格護される百幅近いご真蹟曼荼羅本尊の調査と修復を進めている。こうした修復の過程で、これまで知られていなかった新たな事実が発見されることも多く、研究の進展とともに後世への宗宝護持の気運がさらに高まることが期待される。
妙本寺では5年前から寺宝の整理事業を進め、平成14年には写真集『妙本寺文書』を刊行した。加藤貫首は「寺宝の格護には細心の注意を払っております。今回の発見は霊蹟妙本寺にとりまして誠に意義深いことで、大切な法華経信仰の宝として後代に伝えていく所存です」と語った。

日朗門流の二大拠点
長興山妙本寺
“比企谷”の通称で知られる。鎌倉の比企谷に屋敷を構えていた有力御家人の比企一族が北条氏によって滅ぼされたとき、ただ一人残された比企能本(大学三郎とも称す)は日蓮聖人の信者となり、法華堂を建立して聖人に捧げた。六老僧日朗上人はこの地を受け継ぎ、鎌倉を中心に各地に教えを弘めていく。以後、日朗門流の二大拠点の一つとして池上本門寺(東京都大田区)と共に両山と並び称された。
平成16年4月には日蓮宗の霊蹟指定を受け、日蓮聖人以来の由緒を今に伝えている。

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