日蓮宗新聞

2004年10月20日号

江戸時代初めの貴重な天海版一切経

本山岩本實相寺(静岡県富士市・豊田英世貫首)は日蓮聖人が『立正安国論』執筆の構想を練られ、経蔵にお籠もりして一切経(仏教聖典の総称、大蔵経ともいう)を紐解いたといわれる霊蹟。この度、實相寺の一切経堂に約50年ぶりの本格的な調査が入り、格護されている一切経が、江戸時代初めの貴重な天海版一切経であることが、中尾堯立正大学名誉教授らによって確認された。
調査は9月1日から4日にかけて中尾教授を中心に望月真澄身延山大学助教授・立正大学大学院生などによって行われ、回転する輪蔵に収められた約六百個の経箱を丁寧に開け、約6千冊の経典を一つ一つ確認していくという気の遠くなる作業が進められた。
各経典の随所に「岩本山日進納」の判がみられることから、天海版一切経は実相寺第15世日進上人(元禄11・1698年遷化)の時代に納入され、さらに施主となった人々の名前や地域も多岐にわたることが確認された。今後の詳細な個別調査が待たれる。
實相寺は永禄11年(1568)に甲斐の武田信玄によって諸堂が焼かれ、日蓮聖人以来の多くの聖教類が失われたという歴史を持つ。江戸時代前期の復興期に天海版一切経が揃えられ、経典を保管する経蔵も合わせて建立されたと考えられる。
中尾教授は「当時の實相寺では、一切経を閲読された日蓮聖人の伝説を蘇らせるために、改めて天海版を揃えるという大事業を行い、それを支えた多くの信者の姿も思い起こされます。伝説と伝統を伝える岩本ならではのすばらしい一切経だと考えます」と調査を振り返った。
また豊田貫首は「實相寺にとって一切経が特別な意味を持つことが、今回の調査で改めて確認されました」と語り、現在、實相寺境内で静岡中部宗務所の事業として進められている常設宗務所(立正研修会館)の建設も合わせ、伝統の地が新たな布教発信センターとして期待されている。
天海版一切経
徳川家康・秀忠・家光3代の将軍に仕え、幕府に大きな影響力を持ち、江戸に天台宗寛永寺を開いた天台僧天海(1536~1643)が、将軍家光を願主として寛永14年(1637)から木活字を使って開板した一切経。天海版は当時の最高技術を用い、我が国最初の一切経刊行となる大事業として日本の印刷文化史上重要な位置付けを持つが、発行部数が少なく広くは普及しなかった。
日蓮宗の寺院では、総本山身延山久遠寺・大本山池上本門寺・大本山妙顕寺(京都市)・大本山本圀寺(京都市)・本山妙成寺(石川県)・本山日本寺(千葉県)に所蔵される一切経が天海版であることが知られており、今回、實相寺本が確認されたことにより宗門内で7例目となった。

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