日蓮宗新聞

2004年7月1日号

日蓮宗初の「世界開教師会義」

「課題は、宗門の定まった見解がないこと。海外布教を見直し、抜本的な改革を宗門に訴える必要がある―」。開教師のプレゼンテーションで現状が垣間見えた直後、海外布教をバックアップするため昨年に設置された国際開教対策委員会(石井英雄委員長)からは冷静な指摘が出された。日蓮宗初の、「世界開教師会議」が5月26日から28日まで宗務院で開催され、開教師16人と国際開教対策委員8人、田端義宏伝道部長ら関係者が出席した。存続の危機にある海外寺院がクローズアップされる中、“開教師とは何か”という根本の問題から審議を託された国際開教対策委員会が、現場の僧侶と対面するのは初めて。会議では、国際開教対策委員会が現状把握に終始する一方、これまで充分に発言する機会がなかった開教師からは要望や訴え、本音が飛び出した。山積みの問題にこれからどう対処していくか―。具体的な一歩を踏み出す前の地ならしが、ようやく始まった。

プレゼンテーションを行ったのは、ハワイの4人、北米の6人、南米の2人と、韓国、東南アジア、インド、開教布教センター(カリフォルニア)の各1人。その国の風習や人々の仏教に対する価値観、開教に至った経緯も全く異なる背景でそれぞれが活動しているため、“いま何を一番の問題と捉えているか”によって主張する内容もさまざまとなった。
寺院という建物の存在について、「仏教国であるため、確固たる寺院が建てばより多くの人に集まってもらえる」(韓国・寶土寺)とする見解とは対照的に、集うことを好まない日本人の信徒が多いために「僧侶が家庭を訪問する方法を取れば開教師の体ひとつで布教は可能」(ニューヨーク)という主張もなされた。
布教以外の活動として、剣道や書道、写経、日本舞踊などの教室を開き、日本の文化を紹介している寺院(ハワイ・ホノルル妙法寺)や、日本語学校をボランティアで開いているが、希望者が多いために出席日数が定数に達しないと、自席がなくなるというユニークな規則のもとで活動している寺院(ブラジル・南米身延山別院恵明寺)も報告された。
信徒の動向について、一人ひとりの向上心が非常に強く、リーダーシップも発揮してくれるために、本人たちが望むように日本人の僧侶に来てもらい勉強会を開いてほしい(マレーシア・ペナン日蓮宗仏教会)との要望が出されたほか、簡単に改宗してしまう風潮があり、人の出入りが激しい(ニューヨーク)、同時多発テロ以降、宗教戦争をしていない仏教に興味を持ち、訪ねて来る2、30代の若年層が増えた(カナダ・トロント日蓮仏教会)といった報告も。良くも悪くも宗教に関心が集まっている世相を反映し、法華経への深い理解を示そうとする信徒が増えている実態が明らかになった。
また、常駐の開教師がいなくなったためにメンバーのショックが大きく、今後の活力が見いだせない(ハワイ・ヒロ教会)とする報告もあり、かねてからの問題である、新たな開教師の育成・派遣が必要であることが再確認された。
それに関連づけて、長年、開教師の育成にあたってきた北米開教区長の五十嵐顕城師は開教師の資質の向上を課題とし、「読経や掃除といった、日常の修行の積み重ねによって芯を鍛えることが求められる。日蓮宗の勢力を伸ばすためだけに信者の獲得に躍起になったり、他宗教に近づけたりする必要はない。独自性を持ち、一人でも多くの人に芯を植え付けることが大切」と述べ、「お祖師さまの力を頂いて布教していることを忘れてはならない」と注意を促した。
翌日には、国際開教対策委員会が3つのプロジェクトに分かれ、三田村昌鳳師、及川玄一師、伊藤佳通師をそれぞれの座長とし、あらゆる問題を細分化して討議していくことが報告された。

世界には大聖人の教えを懇願している人が・・・

国際開教対策委員会では、この会議前に「外国人教師自体が本当に大切か」との問題提起もあったというが、実際に現地の話を聞いた後で、それがすぐにでも求められる現状があることに充分な理解を示した。今後の展望として、「この組織で具体的な活動をするのは次の世代になるだろう」との厳しい声もあったが、海外に日蓮宗が目を向けることで、「“世界にお題目が響いているのだ”という意識を私たちも持つことになる」(三田村座長)という、日蓮宗信徒全てにおいて信仰の面で支え、心強さが生まれることも海外開教の利点として挙げられる。世界には、正しい日蓮聖人の教えを懇願し、そのために日本からの援助を心待ちにしている信徒が大勢いる。幾つもの切なる願いが日本に届けられている今、強力な支援体制の構築が早急に求められている。

法要式と“尊重”“厳粛”重要性を説く  法式声明のシンポジウム

会議に先立ち、24、25日には開教師・外国人教師(僧侶)を対象に、開教布教センタ-(松田龍紹理事長)主催による法式声明のシンポジウムが池上本門寺を会場に行われ、外国人教師三人のほか、佐野順常声明師会会長ら約60人が出席した。
初日は早水日秀日蓮宗声明導師が「僧侶は、なぜ法式声明を学ばなければならないか?」と題し講義。法要が世界中のどこで営まれても、共通の認識をしっかりと持たなければならないとして、法要式と、二大得意である“尊重”と“厳粛”の重要性を説いた。
翌日には、外国人教師が実際に現地で行っている雰囲気を真似て法要を披露。早水師の指導のあと、最後に開教師と参加者全員による法要が行われた。

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西安草堂寺で鳩摩羅什三蔵法師顕彰法要

日蓮宗は岩間湛正宗務総長を団長とする第11次日蓮宗中国訪問使節団を結成、6月22日から29日まで、北京市中国仏教協会への表敬訪問と、鳩摩羅什三蔵法師が日蓮宗徒の経典『妙法蓮華経』を翻訳した西安市草堂寺参拝・天台大師智顗開創による浙江省天台山国清寺参拝を三本柱に各地を訪問した。
昭和55年、第一次公式訪中団として中国仏教協会と正式な交流を開始した日蓮宗は、二十数年にわたり宗門と縁の深い各所で交流を重ね、とりわけ草堂寺復興、鳩摩羅什紀念堂建立、国清寺内のお題目塔建立など顕彰事業を進めてきた。今回の訪問は、平成8年に実施した第10次から実に8年の月日を経ていたが、各地で熱烈な歓迎を受け、岩間団長は「日蓮宗深い関係のある中国仏教をより興隆に導いて頂けるよう、また中日両国間の仏教徒交流のみならず、この貴重な仏の教えが世界という舞台でより興隆することができますよう、これからもより活発な交流と協力とを心よりお願い申し上げます」と語り、日中親善友好、中国仏教協会との親睦交流をより積極的に図っていく旨を表明。平成14年の人事改正で新スタートした中国仏教会側からも「引き続き日本の各仏教団体との友好関係を重要視する立場」との言葉を受け、より堅固な友好関係に向けて大きな成果を上げた。

 22日午前10時半、東京国際空港で結団式を済ませた岩間団長、副団長の田端義宏伝道部長、渡邉一之立正大学学園理事長をはじめ僧侶・寺庭婦人・檀信徒を含む一行38人は一路、北京へ。
北京国際空港では中国仏教協会の●(くさかんむりに遽)俊忠副秘書長兼国際部主任らの出迎えを受け、北京市広済寺で法味言上の後、境内にある中国仏教協会を表敬訪問。学誠副会長兼秘書長はじめ中国仏教協会の幹部と会談した。学誠副会長は挨拶の中で、故・趙樸初前会長が「いつまでも日蓮宗を含む日本仏教団体との友好交流を」と日蓮宗との友好交流を非常に重要視していたこと述べ、今後もその伝統的な友好関係を結んでいくと語った。
翌23日は、北京市中国仏学院を訪問した。副院長の伝印法師と会談した後、学生を前に岩間団長が日蓮聖人のご生涯から教義、日蓮宗の現代に対する役割・使命について講演。「今後ともお互いが切磋琢磨し、より多くの人々の心の支えとなり、それが仏教全体の世界的な活性化に繋がりますよう一層親密な興隆を」と語った。その後国家宗教事務局では、郭副司長と会談した。
24日、空路西安へ。25日、西安市郊外の草堂寺に到着した一行は、釈諦性住職、界明・陝西省仏教協会副会長兼秘書長らと挨拶を交わした後、平成2年に日蓮宗が寄進した鳩摩羅什紀念堂で「鳩摩羅什三蔵法師遺徳顕彰法要」を岩間団長を導師に日蓮宗の法要儀式に則って厳修。引き続き、舎利塔前に建立された顕彰碑の除幕式を行い、羅什三蔵法師に報恩と回向を捧げた。
27日、空路杭州へ。空港からバスで約4時間、天台山国清寺に到着。さらに山道を進み、天台大師肉身塔を参拝した。翌28日は国清寺の朝勤に参列し、お題目塔で法要を行った。日中仏教友好親善の一翼を担った団員は、法華仏教の源を肌で感じ、29日全員無事に帰国した。

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新年のご挨拶。

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