2004年7月1日号
平成16年度佛教文学会大会
仏教的文学、芸能、一般文学、芸能の中に現れた仏教の研究を目的としている佛教文学会(代表委員・大取一馬龍谷大学教授)が6月5、6日、東京品川区の立正大学(高村弘毅学長)を会場に平成16年度佛教文学会大会を行った。
佛教文学会は関西に本部、関東に支部を置く伝統ある学会で、加盟する個人・団体は約700。各支部で年3回の例会と年1回の合同例会、大会を行い、若い研究者の育成に力を入れている。
仏教文学は日本の文学と仏教だけでなく、インドや中国という地理的にも、中世や近世といった時代的にも範囲が広く学際的な分野といえる。仏教、文学それぞれの専門の人々が手を携えて成立する学問である。
石橋湛山記念講堂で営まれた大会は、はじめに大取代表委員が挨拶。続いて高村学長が「私は水文学を研究していますが、文学は学問という意味であらゆるものと共通しています。皆さんの研究成果が広く発揮される大会でありますように」と挨拶した。
引き続き公開講演へ移り、大阪府立大学名誉教授の三輪正胤氏が「呼子鳥の行方―近世後期高野山一学侶の窓から―」と題して講演。長年和歌の研究を行う三輪氏は、和歌や文学の中に見られる「呼子鳥」とい一羽の鳥を追い続け、歌学伝授における三鳥三木の秘密であることを挙げ、その諸相には真言密教と関わりがあるとした。
続いて立正大学名誉教授の今成元昭氏が「教団における偽書の生成と展開―日蓮の場合―」と題した講演を行った。今成氏は自身の研究課題である日蓮聖人の摂受折伏観にそって話を進め、聴講者である他宗や一般の人々にご遺文の一節を取り上げながら、多くの難に遭われた日蓮聖人が「願わくば、自分にあらゆる迫害を加えた国主たちに、まず初めに法を説き導いて法華経に帰依させよう」と思われた慈悲の深さ、偉大さを説いた。
翌日は研究発表会が行われ、発表後の質疑応答では、若手研究者に対し、多方面的な見方や方向性を示すなど温かいアドバイスが送られていた。
今回は立正大学を会場に、小山一成立正大学文学部教授を中心に仏教学部、文学部、身延山大学の教授陣が委員として運営に参加、学生等もスタッフとして大会を支えた。