日蓮宗新聞

2004年3月10日号

立正大学学園総合学術情報センターが完成

東京都品川区の立正大学学園(渡邉一之理事長)が開校130周年事業の一環として進めてきた地下3階地上11階の総合学術情報センターが完成し2月29日、落成式が営まれ、大学関係者、工事関係者、地域住民ら約140人が参加した。
落成式では渡邉理事長が、地域社会に開かれた大学として、交流の場を提供していきたいと挨拶。その後、渡邉理事長から建設に携わった石本建築事務所、西松建設株式会社へ感謝状と記念品が贈呈された。
落成式終了後、センター内の見学会が行われ、参加者は最先端の技術を導入する真新しい内部に、大学教育の発展を期待している様子だった。
正午からの祝宴では吉田榮夫立正大学学長が国内外の情報収集と外部への情報発信を行い、今後は中味を築き上げていきたいと挨拶。学園総裁・藤井日光猊下名代の岩間湛正宗務総長は「立正大学の発展は日蓮宗にとっても嬉しいことです。少子化という時代の流れの中で、積極的に施設の拡充に取り組まれる大学の姿勢に敬意を表し、この施設が大学発展の第一歩となると思っています」と話した。
続いて加藤吉則副学長が、大学と世界を結ぶセンターの完成を喜ぶと共に、メディアセンターの機能充実と、国際法華経センター、各研究所、イベントルームを設置して社会交流・発信の基地として活用していきたいと語った。
進化する情報処理教育に対応するための施設・総合学術情報センター。今後、情報発信の拠点として、また学生の研学精神を伸ばす施設として期待される。

立正大学総合学術情報センター
東京の主要道路の一つ、山手通りに面し、大学教育の情報化の拠点となる建物を目指したとあり、随所に情報処理教育に対応可能な最新のシステムを導入した教室が設置されている。地下一階から地上3階までのメディアセンターは図書館の機能を果たすと共に、パソコンを設置し、本を閲覧しながら情報処理も行える。また2階にはインターネットカフェを併設。4階から7階は一般教室やゼミ室が設けられ、五階のプレゼンテーションラボ教室では大崎校舎と熊谷校舎、他大学または海外との遠隔授業などを行うことができる。八階から11階には会議ホール等を設置。光を多く取り入れた設計で、教室は白や黄色、ブルーなどを基調とした机や椅子で、明るい空間となっている。将来的にはセンターを一般にも開放し、地域社会への貢献や、大学の知的財産の公開など情報発信の中核をなす施設を目指す。図書館やカフェ、教室は4月から利用可能だが、情報センターとしての機能の本格的稼働は10月を予定している。

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妻偲び俳壇へ10年投句

表紙に「追悼譜」と自筆された、一冊の句集が完成した。
妻亡き後、妻が長年投句していた日蓮宗新聞「法華俳壇」(毎月10日号)に、10年にわたって投句を続けてきた読者・故堀井隆三郎さん(享年87歳)が詠んだ妻への追悼の句、約850句が収められている。
昨年12月、完成を目前に“彼岸”へ渡った隆三郎さんの遺志を息子・裕三さんが受け継ぎ、隆三郎さんの墓前に句集の完成を報告した。

静岡県伊東市妙隆寺(罍慈秀住職)の筆頭総代、堀井隆三郎さんは平成5年、妻・安代さんをクモ膜下出血で亡くした。二人で畑に行き、昼の弁当を開きながら楽しく会話をしていた安代さんが、夕食の後、受話器を手にしたまま倒れ、数日後息をひきとった。
安代さんは生前、「法華俳壇」に投句。選者の上田正久日師(山梨県上澤寺住職)から指導を受けながら俳句を嗜んでいた。隆三郎さんも安代さんに教わりながら二人で句を詠んでいたが、安代さんが亡くなった平成5年から本格的に「法華俳壇」に投句を始めた。その句は、ほとんどが安代さんを偲んだ詩。安代さんが遺した湯呑み、植えた山茶花、畑仕事に持つお弁当を入れていた手編みの袋、菜の花の間から見え隠れした安代さんの姿…生活の中でふと蘇る安代さんへの思いが、五七五に溢れている。

 

御仏に妻の名唱え別霜

亡き妻と通ひし野良路辛夷咲く

妻遺す湯呑みに新茶畑昼餉

 

「俳壇」を通して、隆三郎さんは多くの俳人仲間と出会うことができた。全国俳句大会にも出席、上田師と1泊2日を共にし、俳句の楽しみを語り合ったこともあった。
安代さんの13回忌を迎える年、畑で摘んだお茶を送った隆三郎さんのもとに、上田師からお礼の句が届いた。
志深く供えて新茶の香
句集の発行を決めたのは隆三郎さんの息子・裕三さん。父の入院中、隆三郎さんの部屋で本人がまとめていた原稿を見つけ、米寿のお祝いに句集の発行を思いついた。隆三郎さんは病床で本の構成を指示したり挨拶文の作成にあたったが完成前に霊山へ。表紙に記された自筆のタイトルは、隆三郎さんが病室で書いた絶筆。巻末には自筆による辞世の句も掲載されている。
裕三さんは500部印刷し、隆三郎さんの教え子らに送付。何十年も音沙汰のなかった教え子から御礼の俳句が届いた。

海越えて旧師あたり春かすむ

上田師は、「日蓮宗新聞を毎月楽しみにし、信仰の糧としていたようです。夫婦で同じ趣味を持ち、同じ信仰に励まれたことは素晴らしいと思います」と追悼の言葉を贈っている。

妻の忌や花散り初めし百日紅

隆三郎さんが「法華俳壇」に投句した最後の句は、奇しくも最優秀作に選ばれた。

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三百一日をかけて法華三部経を完成

「あの時、写経を知らなかったら鬱病になっていたでしょうね」――。
昨年9月21日、京都府丹後町妙源寺(藤崎一明住職)に、井桁に橘の生地で表装された巻子本十巻にわたる法華三部経が納められた。その中には「無量義経」「法華経」「観普賢菩薩行法経」の約8万字が、その大きさ、太さ、筆勢を少しも崩すことなく整然と書写されている。一見しただけで、精神を集中して筆を進める緊張感と、一文字一文字に込められた思いが伝わってくる。
観普賢菩薩行法経の巻末に記された願文の中には「景秀院妙淨日延大姉之菩提之為」の文字。50年以上連れ添った妻に先立たれた夫が、妻の菩提を弔うために行った写経だ。

東京都大田区在住の橋本久男さん(76)は平成13年、ノブ子夫人を77歳で失った。それまでは、伴侶に先立たれたショックで急に老け込んでいく友人達を見て、励ましの言葉をかけながらも自分はそこまで落ち込むことはないと思っていた橋本さんが、我を失った。まさに“茫然自失”。ふと、生前ノブ子夫人から言われた言葉を思い出したのは、部屋に閉じこもる生活が4ヵ月続いた頃。「藤崎さんのお寺に納経して欲しい」。橋本さんはノブ子さんのためにと筆をとった。

藤崎住職と同級生
橋本さんと藤崎住職は、立正大学仏教学部で机を並べた同級生。家族ぐるみのつき合いを続けていた。退職後に写経を始め、藤崎住職や同じ同級生の横田英学師(和歌山市一乗院住職)から教わりながら、それまでも菩提寺の横浜市妙福寺や池上本門寺に納経をしていた橋本さんだったが、その時の写経は「それまでとはまったく違った」。“ノブ子さんのために”と始めたはずなのに、一文字一文字進めるごとに自分が救われていく。悲しみは深いままだったが、自分を取り戻し、少しずつこれからの生活に前向きな気持ちになれた。

心遣いに涙
三百一日をかけて三部経を完成。足腰に自信がなかったため、京都まで宅配便で納経をすまそうと考えていた橋本さんだったが、「何としても出てこい」という藤崎住職の誘いに、持参することを決意。ノブ子さんが亡くなってから初めての旅行となった。そっと置いて来るつもりで到着した橋本さんを、藤崎住職と檀信徒30人が出迎え、納経会法要が営まれた。「私よりも檀信徒の皆さんの方がネクタイをしめてきちんとした格好でした」。温かい心遣いに涙が流れた。

現在、橋本さんは5回目の法華経写経に挑戦している。朝のお勤めを終え、朝食や洗濯などの家事を終えた後、目の疲労が少ない午前中のうちに机に向かう。まず、お経文を訓読で読んでから筆をとる。5回目だが「まだまだ意味は理解できません」。
「一人ですが、時間を持て余したことは一度もないですよ」。
法華経の教えを心に写し取る写経。菩提を弔われる故人だけでなく、生きている私たちにも大きな功徳を与えてくれる。

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新年のご挨拶。

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