日蓮宗新聞

2004年2月10日号

日蓮聖人遺文辞典 教学篇

身延山久遠寺(藤井日光法主)は、立教開宗750年慶讃事業として昨年10月、日蓮教学研鑽・御遺文拝読の基礎資料となる『日蓮聖人遺文辞典 教学篇』を出版した。この事業は昭和62年から企画・執筆・編集が始まり、完成まで17年の歳月が費やされている。発行に際しては、企画段階から日蓮宗宗務院(岩間湛正宗務総長)も助成を行い、執筆・編集は立正大学日蓮教学研究所が中心となり進められた。今回の辞典出版に際して、日蓮聖人遺文辞典刊行会編集委員長として編集行程を指揮した立正大学日蓮教学研究所所長の小松邦彰教授に、発刊に至る経緯や辞典の特色などについて取材した。

【刊行計画の立ち上げ】
『遺文辞典』の編集計画自体は昭和42年に遡ります。すでに『昭和定本日蓮聖人遺文』(全4巻)を編集し、日蓮聖人研究の基本遺文として刊行していた日蓮教学研究所(以下、日教研と略記)は、さらに聖人御遺文拝読の手引書となる辞典の編集刊行を企て、同43年に日教研内に茂田井教亨教授を編集主任とする編集委員会が発足したのです。

【昭和60年に刊行された「歴史篇」について】
編集委員会発足当初はコンサイス版の予定でしたが、語句の採録、検討を進めていく中で、編集の基本方針が本格的辞典の編集へと変更され、歴史篇と教学篇の二巻に分け、歴史篇を先に刊行することになりました。
歴史篇は『昭和定本日蓮聖人遺文』第四巻索引をベースに、日蓮聖人遺文に登場する諸尊名・人名・地名・書名・故事など1万750項目の語句を収録し、本文解説は四段組の1226頁に及んでいます。そこでは大正9年に刊行された『本化聖典大辞林』(田中智学監修)以後の宗学・教団史・書誌学等の最新の研究成果をふまえた高い水準の解説がなされ、遺文解題(著作の由来・内容・著作年月日などの解説)の対象も全ての遺文534篇にわたっていることが大きな特徴となります。

【膨大な費用と労力】
昭和60年の歴史篇の刊行と同時に姉妹編としての教学篇が各方面から待望され、同62年に日蓮宗宗務院からの引き続きの助成が決定しましたので、収録語句の選定などの編集基礎業務が開始されました。
しかし、この種の辞典の編纂にかかる膨大な費用と労力は想像以上で、編集刊行への本格的な実行にはなお躊躇を余儀なくされたのです。
このような中、日教研では着々と業務を進めていたのですが、平成3年に浅井圓道所長(当時)が7万枚に及ぶ語句カードを携えて身延山に登山し、当時の藤井教雄総務(現在の藤井日光法主猊下)・宮崎英修身延山短期大学学長・早川要義経理部長と会談しました。
この会談によって身延山当局は財務上の保証を確約してくださり、教学篇は身延山久遠寺の立教開宗750年記念事業の一環として刊行されることが正式に決定し、併せて宗門の支援も受け、身延山久遠寺発行、日蓮宗宗務院協賛という体制が整ったのです。

【「教学篇」完成まで】
平成5年、正式に「日蓮聖人遺文辞典刊行会」が発足し、浅井圓道編集委員長の下で本格的な編集作業が始まりました。
七万枚に及ぶ語句カードを約1万2000項目に絞り込み、70余名の執筆者に原稿依頼を出し、全ての原稿を回収し補筆を終えるまで五年間を費やしています。また万全を期すため、引用文と出典の確認には日教研研究生が逐一行いました。
当初の刊行予定から一年半の遅れとなりましたが、平成15年10月に漸く完成し、身延山久遠寺のご宝前に奉呈し、藤井日光法主猊下・井上瑞雄総務にご報告することができました。業務開始から17年、歴史篇を含めた発願以来、実に36年を経過しての事業完結となります。

【教学篇の特色】
このように完成した教学篇は、総頁数四段組1292ページ、項目数は9609項目に及びます。本書の特色は日蓮教学に関する述語はもちろん、天台教学をはじめ仏教諸宗派教学の用語や、複合語・成句に至るまで多くの項目を網羅し、重複を厭わず解説を行った点で、初学の方にとっても懇切な辞典であると思います。
さらに遺文中の引用経論釈の用語については所収文献の巻数・頁・段まで表記し、利用者の便を計ったことも従来の仏教辞典に比べて大きな特徴と認めていただけると思います。

【日蓮教学研究の一つの成果】
『日蓮聖人遺文辞典』は歴史・教学両篇を合わせると、総項目数は2万359項目、本文は2518ページに達します。
それでもなお、語句選定の漏れは免れず、反省点も多々ありますが、現時点における日蓮教学研究、御遺文研究の成果として、宗門の布教興学に少なからず寄与できる内容であると信じております。
全国の寺院・教会・結社には既に身延山久遠寺より贈られておりますが、大学生や檀信徒の皆さまにも是非、『御遺文辞典』を御遺文拝読の指南書として常に座右に置き、大いに活用して頂きたいと願う次第です。

次号は「御遺文辞典」特集第二弾
立正大学で座談会
次号では『遺文辞典』特集第二弾として立正大学で行われた座談会「これからの指針となる遺文辞典教学篇」の模様をお伝えします。

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全日仏会長に藤井日光日蓮宗管長

財団法人全日本仏教会は1月28日、京都市内のホテルで理事会・評議員会を開き、第26期会長に日蓮宗管長の藤井日光猊下(身延山久遠寺法主)を推戴した。同日開かれた平成16年新年懇親会には関係者約200人が訪れ、藤井新会長が就任のご挨拶を述べられた。日蓮宗から全日本仏教会会長に就任したのは、昭和57年の金子日威管長(第15期会長)以来2人目。

新年懇親会に先立ち、大谷光真(浄土真宗本願寺派門主)前会長から藤井日光新会長への交代に伴い、記者会見が行われ、多数のマスコミ関係者が訪れた。
午後5時半、会長・副会長・理事長が壇上に立ち、仏教徒の歌を斉唱して開会。大谷前会長は「2年間会長を務めさせて頂きました。今後も皆さまのお力で、全日本仏教会が益々充実、発展することを念願申し上げます」と挨拶した。
藤井新会長は「釈尊のご遺命と受け止め、加盟団体の皆様と共に、大慈悲を説かれた仏さまの教えを宣布すべく重責を拝命しました。世界の多くの人々が苦難にあえいでいる時代ですが、私たち仏教徒が和の精神をもとに力を合わせ、世界の平和に寄与することが求められています。仏旗に込められた六色の光明が世界を覆い、全ての人が幸せになりますよう、皆さまと共に手を携て伝道の歩みを進めて参りたく念願するものでありますので、ご来臨各聖のお力添えをお願い申し上げます」と第26期会長就任のご挨拶と抱負を力強く発せられた。
続いて、安田暎胤副会長(法相宗管長)が乾杯の発声。懇親が深められる中、関係国会議員等が加わり挨拶を述べた。
閉会にあたり、常務理事を務める岩間湛正日蓮宗宗務総長が「日蓮宗としても藤井法主猊下が会長にご就任された責任の重さを感じております。また、各宗派の今後のご活躍をお祈りし、かつご協力、ご支援を賜りますようお願い申し上げます」と閉会の辞を述べた。

財団法人全日本仏教会
仏教各宗派の連携等を目的に昭和32年(1957)に財団法人「全日本仏教会」を設立。現在は58宗派の仏教教団、都道府県仏教会、各種団体等合わせて103団体が加盟しており、会長はその中の主要な十教団から推戴される。任期は2年。主な活動として、機関誌『全仏』の発行、世界仏教徒連盟(WFB)日本センターとして、世界の仏教徒の交流を推進している。

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2004年2月1日号

市民追悼式「声明と琵琶のしらべ」

平成16年1月17日は阪神・淡路大震災から9年目の日。6433人の尊い命が奪われ、現在も、復興住宅の家賃が払えずに強制退去を余儀なくされる世帯は360余、震災に関連した自殺や孤独死は250人余を数えるといわれる(いずれも平成14年度までの統計)。街に目を向ければ、復興の影には、公営住宅に入居できない人々や空き店の増える商店街、長引く不況など市民の受けた傷は、今もなお、大きく深く残っている。
歳月は流れても被災者の思いは流れ去ることはなく、震災の犠牲を絶対に風化させてはならないという思いを込め、市民追悼式「声明と琵琶のしらべ─すべての震災犠牲者にささげる─」が1月17日に神戸市勤労会館で開催され、遺族、被災者ら約250人が参加した。

追悼式の運営は寺院を拠点に被災地支援を続けているNPOボランティアネットワーク“Earth”(アース=理事長・石原顕正山梨県立本寺住職)と社会団体「阪神淡路大震災被害者ネットワーク」。
追悼式に先立ち、大震災発生の5時46分に合わせて神戸市中央区の諏訪山公演で早朝追悼集会が行われ、前日に山梨からバスで神戸入りしていたEarth関係者18人と有志僧侶が、集まった市民と共に雪の降る中、献花と黙祷をすべての犠牲者に捧げた。
追悼式は午前10時に開会。震災で娘を亡くした広瀬百合子さんが参列者を代表して“遺族の想い”を語り、会場からは啜り泣きの声が漏れた。続いて、追悼式実行委員会の安田秋成委員長が追悼の辞を述べ、被災者で詩人の玉川ゆかさんが追悼の詩を朗読。
11時からの法要は石原理事長を導師に、全国から参集した12人の有志僧侶が出仕。声明と読経に合わせて神戸市在住の女性琵琶奏者、川村旭芳さんによる琵琶の音色が会場を包み込み、この日のために川村さんが作曲し、母の素子さんが作詞した一曲も捧げられた。続く唱題では、参列者の大半が宗旨の異なる中で皆一同に合掌してお題目を唱え、一心に祈りを捧げる光景も。法要終了後、Earthが全国から募った支援米によるおにぎりと温かい味噌汁が参列者に提供され、「お元気で来年も会いましょう」と再会を約束し追悼式を終了した。
石原理事長は「9年間にわたる神戸・山梨500kmの道程を超えた尊いご縁に感謝します。震災後、未だ犠牲が増え続けている現状を風化させないためにも、元被災者との歩みは当分終わらないでしょう」と語っている。

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新年のご挨拶。

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