日蓮宗新聞

2003年12月10日号

日蓮聖人ご真筆曼荼羅本尊から指紋

静岡県沼津市の妙海寺(笹津海道住職)で格護されている弘安3年5月の日蓮聖人曼荼羅本尊から聖人御自身のものとみられる指紋が見つかった。これは今年の3月から進められていた修復調査で明らかになったもので、中尾堯・立正大学名誉教授が確認。聖人の実像を肌で感じることのできる大きな発見につながる可能性が高い。(本紙9月20日号「ご真蹟に触れる」に一部既報)
指紋が見つかった曼荼羅本尊は、日蓮聖人60歳の弘安3年(1280)5月8日に顕示されたもので、大きさは丈99cm×幅54cm。指紋は向かって左下の「大増長天王」(図①)と中央下の花押の部分(図②)に合わせて約10ヵ所みられ、遠目では気づかないが、近寄って目をこらして見るといくつかの指跡を見ることができる。
中尾教授によると、日蓮聖人が曼荼羅本尊を揮毫される際、「大増長天王」の部分は四天王の中でも最後に書かれ、墨の乾かないうちに署名と花押に移る。その時“天”と“王”の付近に左手を添えられ、偶然にも指紋が残ったと推測される。
また料紙の表面には、滑りのよいように木槌でたたいて紙の目を緻密に加工する「打ち紙」の技法が施され耐水性に優れているため、墨跡が乾きにくかったことも影響しているとみられる。
さらに花押部分の指跡に関しては、ちょうど同じ日に揮毫された日華上人授与の曼荼羅本尊(法華宗本門流本山・京都本能寺蔵)の存在も関係しているという。すなわち日蓮聖人は本能寺蔵の曼荼羅本尊を先に揮毫されたために、二幅目(妙海寺の曼荼羅本尊)を書き上げ、最後に筆をおろした時には、その労力の大きさから思わずフラッと料紙に両手を付かれたという想像も成り立つとしている。
中尾教授は「文字中に残された指紋からは、日蓮聖人が渾身の力を込めて曼荼羅本尊を揮毫されていた尊いお姿が伺われ、聖人の実像を身近に感じることのできる数少ない例となるのではないか」と語っている。

11月19日に特別開帳
修復を終え、およそ8ヵ月ぶりにお曼荼羅をお迎えした妙海寺では、11月19日に特別開帳が行われ、多くの檀信徒が参集した。午後2時、堂内にお題目が響く中、宝前に曼荼羅本尊が掲げられると、参加者からは一様に感嘆の声が。その後、間近まで進み、一人一人が合掌して曼荼羅本尊を拝した。
続いて、列席していた中尾教授が今回の修復と指紋発見の経緯を参加者に説明し、笹津住職は「日蓮聖人を身近に感じてさせていただく有り難い機会となりました」と挨拶した。参加者も「日蓮聖人がそこにいらっしゃるようで、喜びでいっぱいです」と声をそろえて感動を共有していた。
妙海寺は、日蓮聖人が当地に8日間滞在し津波除けの祈祷を行ったのが始まりといわれ、現在も八日堂の法会として毎年大晦日から正月8日まで祈祷会が行われる。最終日にあたる8日の午前6時頃には、今回の弘安3年の曼荼羅本尊を含めた、合わせて三幅の日蓮聖人曼荼羅本尊が掲げられ、多くの参拝者が訪れる。

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2003年12月1日号

“江古田のお会式”報恩音楽法要

全身で奏でる僧侶の声明。奏者に抱え込まれ、その体の延長となって繊細かつ重厚な音色生み出す弦楽器。己を開放して全身で受け止め、思いのままに堪能する聴聞客。同じ空間で調和を保ちながら個々のスタイルを確立させるとともに、参加者すべてが弦楽・声明・読経を通し、雑ぱくな日常から離れて自分を見つめ直す「智慧」を養ってもらえたら―。そんな思いで、ある音楽法要が行われた。
東京・中野区蓮華寺(金子光秀住職)で11月8日、お会式に伴う報恩音楽法要が営まれた。同法要は蓮華寺で11年間続いている仏前コンサート。今年は「智慧」をテーマに、コントラバス奏者の藤原清登氏、ヴァイオリン奏者の加藤知子氏を迎えて行われた。檀信徒や音楽ファンの若年層約60人が足を運んだ。
午後5時頃、ほんのり淡い光に包まれた本堂に粛々と聴聞客が着席。はじめに、檀家総代の深野良之助さんが「檀信徒にとっても大事な意味を持つお会式。工夫を凝らし、有意義なお会式にしようと今年も企画しました」と挨拶。続いてヴァイオリン演奏、洒水散華、声明が行われた。
寿量品の読誦では両弦楽器がバック演奏として登場。ヴァイオリンの繊細な響き、コントラバス特有の長い余韻がテンポ良く流れる寿量品との見事な調和を見せていた。
終盤には聴聞客がうちわ太鼓を叩きながら唱題。全員で“音曼荼羅”の世界を演出しようと企画されたもので、太鼓の音、力強い唱題の声が堂内にこだました。
金子住職は「音楽と芸術が行き着く所には宗教があると思う。仏の教えをただ学ぶのではなく、生活そのものとして求めていきたい」と語っていた。

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子ども達と同じ目線で一緒に未来を築く姿勢が大切

「お寺離れ」「信仰継承の難しさ」が叫ばれる現代、日蓮宗では布教方針「次世代へのアプローチ」のもと“子ども達をどのようにしてお寺に集め接していくか”をテーマとした平成15年度青少年教化指導者講習会が11月18、19日、東京・池上の宗務院で開催された。全国の青年会員や青少年教化に関心のある僧侶約60人が参加。今年度は“青少年教化は既成教団全体の問題”として他宗派の僧侶3人を招き、講演を行った。
開会式では岩間湛正宗務総長が「かつて寺院は、寺子屋、子供会の場として機能し、自然に信仰心が身についていた。子どもたちの寺離れが進んでいるが、お寺があるべき姿を取り戻せるよう学んで下さい」と挨拶。講習会に入り、他宗派の僧侶が講演を行った。
真言宗智山派の佐藤雅晴氏はオウム真理教(現アレフ)の事件以降、青少年教化の重要性を感じ、自坊で子供会活動を続けている。朝のお勤めやレクリエーションを通して、お寺を中心に宗教的情操教育を行うことが大切だと説明した。
続いて浄土宗僧侶、大河内秀人氏が講演。大河内氏は財団法人全国青少年教化協議会を退職後、子どもの権利条約が生きる地域を目指す「江戸川子どもおんぶず(江戸川子ども権利センター)」の共同代表他、さまざまなボランティアや市民活動に携わっている。その経験を通して青少年教化について考えた結論として「教義をふりかざして子どもに教える時代ではない」「今の人は“お説教”ではなく、社会の中に関わって実際に何かに取り組んでいる人の話を必要としている」「“教化”ではなく、いかに私たちが社会に関わって、その中で子ども達を“教化対象者”としてではなく、人間として同じ目線で一緒に未来に向かって築いていこうという姿勢が大事」と述べた。
また、地域社会と密着した寺院を目指す大河内氏は、自坊の屋根に太陽光熱で電気を作る装置を置き、電気を町に還元している例を紹介した。
同様に浄土宗の中村勝胤氏は、仏教行事を生かした教化活動、お正月の子ども寒行から始まり、子ども文庫の開設、土曜学校で行っているレクリエーションの一端を披露した。
2日目は3講師を交え、伝道推進委員の北山孝治師(岡山県妙楽寺住職)をコーディネーターに、大西秀樹師(京都府松林院住職)、中山観能師(石川県宝泉寺住職)、伝道企画委員の古河良晧師(東京都常圓寺住職)が加わりパネルディスカッションを行った。パネラーの席を囲むように参加者が座り、全員参加型の討論形式で進行。混迷する社会にあってそれぞれの宗派の特質を生かし、地域社会での仏教寺院が青少年の宗教情操教育を担う役割の大きさを改めて実感した。
閉会式で田端義宏伝道部長は「青少年教化はすぐに成果は見えません。30年後を考えて腰を据えてゆっくり取り組んで頂きたい。地元へ帰って、“三人から始める青少年教化運動”にこの講習を生かして頂きたい」と語った。

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新年のご挨拶。

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