日蓮宗新聞

2003年8月20日号

日蓮宗勧学院 平成15年度中央教学研修会開催

日蓮宗勧学院(浅井圓道勧学院長)は7月29日から8月1日の4日間、平成15年度中央教学研修会を日蓮宗宗務院で開催し、約40人が参加した。
立教開宗750年の円成を迎えた今年度は、751年以降の宗門興隆を目指し、統一テーマを「宗門の興隆を考えて、教学の基本を学ぶ」として、6人の講師が多方面から講義を行った。
開会式では藤崎一明伝道局長を導師に法味厳上。続いて浅井学院長が「宗義大綱」について講義を行った。
2日目の午前中は、川添昭二講学職が「御遺文から見る日本中世史」と題して、鎌倉仏教・日蓮聖人の研究の動向を解説。その中で、鎌倉幕府のはじまりからの「自界叛逆難」の系譜を追っていくと、日蓮聖人は現状を把握し、和田合戦・承久の乱等の歴史的な認識をもとに『法華経』をもって弘教なされたとし、また、日蓮聖人遺文の日本中世史における史料としての重要性を指摘した。
続いて、『日本国語大辞典』(小学館)にも訴状の例文として紹介されている「沙弥常忍訴状(案)」を用いて、古文書解読の具体的な解説をし、あまり知られていない冨木常忍の顕彰の必要性を説いた。
2日目午後から最終日にかけては、河村孝照勧学職が「日蓮聖人の法華経」、坂輪宣敬講学職が「法華経の文化的表現」、庵谷行亨講学職が「日蓮聖人の思想系譜」、上田本昌勧学副院長が「日蓮教学の基本的意義」についてそれぞれ講義した。
それぞれの講義修了後には、聴講者の熱心な質問に講師陣がに答え、教学の心髄を把握し宗旨の顕揚について共に語り合う場として、充実した4日間の研修会を終了した。

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「伝えよう みほとけの心を園から家庭に」

「伝えよう みほとけの心を園から家庭に」をテーマに第49回日蓮宗保育研修盛岡大会(日蓮宗保育連盟主催)が7月26日・27日の2日間、岩手県盛岡市内のホテルで行われ、日蓮宗保育連盟(冨田義董理事長)に加盟する保育園・幼稚園の園長・保母・教諭ら180人が参加した。同連盟には現在、109園が加盟しており、今大会では30園の参加のもと、仏教保育の研修と関係者同士の交流が深められた。
大会初日の26日は、同日早朝に東北地方で発生した地震で参加者の足に影響が出たため、予定より1時間遅れの午後2時から開会式が行われた。
始めに、会場に到着したばかりの岩間湛正宗務総長が「みなさんのお仕事は、損得では計れない大変崇高なものだと常々思います。これから社会へ巣立つ子供達に対して慈悲の心をもって接することで、子供だけでなく自身も仏の境界に至るのです」と参加者を激励し、続いて田端義宏宗務院伝道部長が「今、教育は国全体の大きな問題となっています。みなさんには子供達の成長の過程を辛抱強く見据えていただき、お仕事に従事されることを御期待いたします」と祝辞を述べた。
研修では、始めに絵本作家で岩手県在住の澤口たまみさんが「子どもと自然と生きる力」と題し講演。澤口さんは命の教育の重要性について、身近な自然と触れ合う経験が子供に慈しみの心を芽生えさせることを強調し、「三つ子の魂百までもというように、大事なことは幼いうちに伝えておかなければならず、自分の場合は、家族に命の大切さと自然のやすらぎ・恐ろしさを教わりました。家族の願いは子供に通じるもので、そうした家族の想いが子供の成長の道筋をつくるのです」と述べた。
続いて劇団「劇団亜季」による公演「読み聞かせ芝居“どんぐりと山猫”」が行われた。物語と詩の朗読に乗せて芝居が進み、豊かな方言を交えて宮沢賢治の童話の世界をユーモラスに表現し、参加者から関心を引いていた。
夜の懇親会では永年勤続者表彰として、30年以上勤続の石井正子さん(神奈川萩園愛児園)に管長表彰が、10年以上勤続の10人の職員に連盟理事長表彰が贈られることが報告された。
2日目の研修では、始めに岩手県伝道担当事務長で児童相談活動を永年行っている吉家本浄師(一ノ関市法泉寺住職)が「仏教的視点からの子育て」と題し講演。吉家師は自身が相談を受けた様々な家庭問題のケースを紹介しながら「親は親の持つ価値観・ものに対する見方を、子供に伝える必要がある。“親の背を見て子は育つ”というが、子供は親の言うことを受け入れなくても親のすることは真似する。よって親が慈悲の想いで伝えた言葉や姿勢は、いつの日か子供の人生に役立つ。子供が社会に出た時、他人と付き合い、自ら判断することのできる“生きる力”を与えてやることが親の仕事なのです」と述べた。
続いて岩手県立大学社会福祉学部教授の佐々木民夫氏が「宮沢賢治の『手紙』」と題し、郷土の偉人で熱心な法華経の信仰者であった宮沢賢治と命の教育について講演。佐々木氏は、賢治が妹トシの死を詠った『永訣の朝』と大正12年に農学校で生徒に配った「手紙」との関連性を解説し、これは世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないという法華経の菩薩の教えに基づいた、賢治による命の教育であったことを述べた。
研修終了後、閉会式が行われ、冨田理事長が「難しい環境に育つ子供たちに今、どんな薬が必要なのか、それをどこまでも探し続けることが私達の仕事です。この研修を明日の保育に役立ていただきたいと思います」と挨拶し、研修生を代表して砂田美佐恵さん(広島県たちばな幼稚園)が「実りある研修を終え、関係の諸先生方に感謝すると共に、これからも、みほとけの子を1人でも多く育てていきたいと心に刻んでいます」と謝辞を述べ、2日間の研修を終了した。
来年は50回の記念大会を山口県で開催する。

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2003年8月10日号

直下型地震!本宗寺院2ヵ寺が被害

7月26日未明から断続的に続いている宮城県北部を震源とした地震は、震度6強が観測されたのをはじめ有感地震は29日午前までに1000回を超え、けが人600人以上、住居被害6千200戸以上という甚大な被害をもたらした。
宮城宗務所(畠山海進宗務所長)は29日に現地を調査、31日、畠山所長が日蓮宗宗務院(東京都大田区)を訪れ、被害状況を報告した。
宗務所管内で最も被害が大きかったのは桃生郡矢本町の妙福寺(谷川海雅代務住職)で、昭和53年の宮城県沖地震で全壊し建て直された本堂がまた大きな損傷を負った。
谷川代務住職によると、26日午前0時13分に発生した震度6弱の揺れでは本堂内の天蓋の一部が落下しただけだったが、午前7時13分ごろの震度6強の揺れでは本堂の屋根瓦のズレや落下、壁のいたるところに亀裂や剥離、納骨堂ではヘリの支柱が大きく傾くなどの被害を被った。地震発生時、朝の勤行中で本堂内にいた谷川代務住職は、直下型の突然の揺れに立つこともままならなかったという。
谷川代務住職は揺れがおさまったのを確認し、すぐに仙台市の施工会社に応急処置を依頼。午後5時の揺れ(震度6弱)が起きたのは、業者が本堂外壁にワイヤーを張るなどの処置を施した直後だった。谷川代務住職は「応急処置がされなかったら、本堂はそのまま全壊していただろう。宮城県は昔から地震の多い所ですが、改めて日頃の備えの大切さを実感します。慎重に修復を行い、お参りできる態勢に早く戻したい」と語っている。
また、遠田郡涌谷町の妙法寺(菅原瑞明住職)では、建物の損壊は軽微だが仏具等が倒れ散乱するなどの被害が出た。
阪神・淡路大震災などの災害時に救援ボランティア活動を行っているNPO法人「ボランティアネットワークEarth」と「日蓮宗東京南部社会活動部」は、地震発生後すぐ現地を訪れ被害状況の把握や炊き出しを行った。29・30の両日、被害の大きかった矢本・鳴瀬・南郷・河南・鹿島台の5町を谷川代務住職と共に巡回したアースの石原顕正理事長(山梨県立本寺住職)は「避難住民の方々は余震を恐れ、ストレスを感じているので、会話をするだけでも心の支えとなる。ボランティア活動で現地に入る時には、事前の調査が必至で、地元で同行してくれる人の存在も大きい。僧侶の枠を超え一市民としての活動を念頭に置いていきたい」と語っている。

九州の豪雨、大きな被害
お盆と重なり、法務と復興に追われる
7月18日の深夜から21日にかけて九州地方を襲った豪雨で、熊本県水俣市や鹿児島県菱刈町、長崎県琴海町において22人の犠牲者が出る大きな災害に見舞われた。
熊本、鹿児島、長崎の3県で、日蓮宗寺院に目立った被害報告はされていないが、福岡県では、19日の集中豪雨で、筑紫郡那珂川町の梶原教会(大坪正志教導)の本堂、庫裡が土砂崩れによりほぼ全壊。飯塚市立正寺(吉川顕誠住職)では、1階の車庫部分で1メートル60センチの浸水、本堂も床上浸水する被害が発生した。

本堂・庫裡が全壊 梶原教会、床上浸水 立正寺
九州豪雨による災害で最も被害が大きかった梶原教会(大坪正志担任)では19日未明、裏山が崩れ、本堂が全壊、庫裡もほぼ全壊、檀信徒が滝修行を積んできた滝も半壊した。普段は大坪担任と、大坪担任が副住職を務める蓮教寺の大坪瑞貞住職、檀信徒が交代で毎日教会を守っていたが、この日はたまたま留守で、奇跡的にけが人はなかった。
大坪担任によると、復興について総代や檀信徒、役場との話し合いを続けているが、裏山の土石流や倒れた大木が覆い被さり、2次災害が心配されるため、手がつけられない状態という。お盆の時期と重なり、梶原教会では法務と復興の対応に追われている。
同県飯塚市の立正寺(吉川顕誠住職)では、本堂は床上浸水し、畳はすべて処分、床も貼り替えを検討している。1階の車庫部分では1メートル60センチの浸水により、自家用車が使用不可能に。納骨堂も約40センチ浸水、一時はたまった水による異臭が立ちこめたという。幸い2階の庫裡部分に被害はなかった。
立正寺でもお盆の法務と重なり、本格的な復旧はお盆が落ちついてからになるという。

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新年のご挨拶。

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